737185a2.jpg名古屋名物の味噌煮込みうどんの専門店に入った。私は、かしわ肉入りの味噌煮込みうどんとごはんを注文した。
しばらくして味噌煮込みうどんが運ばれてきた。続いてごはんも。味噌煮込みうどんは土鍋で煮込まれており、蓋が置かれたままグツグツ音をたてながら運ばれてくる。蓋をとると、直前に落とされた生たまごがプルプル揺れている。私はその生たまごを箸でくずして味噌つゆにからめた。
と、その時、店員さんが小走りにやってきて、『申しわけございません。ご注文していただいたのはかしわ入りでしたはずですが…、そちらは普通の味噌煮込みでして…』つまり間違えたようだ。というか、きっとかしわ肉を入れ忘れたのだ。『すぐに作りなおして参りますので』と言ってくださった。
私はとっさに考えた。作り治すとは…、既に私は生たまごをかき混ぜている。これにかしわ肉を放り込んで、『はい!作りなおしてきました』とは決して言わないだろう。きちんとした仕事をするなら、再び生たまごを復活させるところまで遡るだろう。つまり、この味噌つゆは最悪のケースでは捨てられてしまう?
そう考えたら、そこまでしてかしわ肉にこだわる必要もないわけなので、わざわざ作り替えていただくこともないと思った。
私は、『あ、いいですよ!せっかくですからこのままいただきますよ!』と返事をした。店員さんは、『よろしいですか?誠に申しわけございません。』と恐縮そうに深々を頭を下げ、さっき机の隅に置いた伝票を手にとって『では、こちらを訂正してまいります。』と言って席を立った。
私は、濃い口の味噌煮込みうどんをおかずにしながらごはんを食べ始めた。すぐに店員さんが訂正した伝票を持ってきた。私に伝票の表を見せて、『普通の味噌煮込みうどんに書き換えてまいりました。それと、そちらのごはんはサービスさせていただきますので伝票からは消してございます。』と。私は、『そんなのいいですよ、ごはんは最初からいただくつもりでしたから。』と言った。しかし、店員さんは『いいえ、ご注文していただいたお食事をご提供できなかったお詫びです。私どもの気持ちですのでサービスさせてください!』と言ってくださいった。
いただいたのは一膳のごはんではなく気持ちなのだ。ごはんのサービスはお店の誠意であり、それに甘えることが私からの返事だと、そう感じてありがたくいただくことにした。
とてもおいしい食事だった!

(写真は昨年撮影したかしわ肉入り味噌煮込みうどん)