9c47978a.JPG真っ黒の写真はミスショットでもブラウザのエラーでもない。拡大してよ〜く見ていただくと白い点々が見える。これは蛍の光なのだ。
ここ(といっても真っ暗だが)は、愛知県と岐阜県とのほぼ県境。瀬戸市の山中だ。最近、都市部周辺ではホタル鑑賞スポットとして「ホタルの里○○」などと名づけられることが多い。ここは、そんな風に観光化されていない珍しい場所かもしれない。山間に流れる川のほとりに無数の蛍が現れていた。整備された道路はあるものの、車通りは少ない。静かな集落を囲むように蛍が飛び交う様は、遠い昔にタイプスリップしたように感じた。
私が生まれ育った長久手村(1970年に町に変わった)は、現在では名古屋市のベッドタウンとなっているが、40年ほど前までは周囲を完全に山でさえぎられた農村集落だった。名古屋市の幹線道路の東の果ては、名の如く「東山」まで。そこから、長久手町までは距離にして約6km。幸い、1964年に開通した東名高速道路の名古屋インターが名古屋市と長久手町の境にできたので、東山から名古屋インターまでの道路が徐々に整備されていった。
その頃、徐々に開通区間を延ばしていった名古屋市営地下鉄東山線は、1969年に現在の東の果ての終点「藤が丘」まで開通した。1965年生まれの私が4才の頃だ。藤が丘駅の周辺には公団住宅が建設され、スーパーマーケットができた。自宅からそのネオン看板が見えた。見えたといっても、深い森の向こうのほうに僅かに明かりが点いているのが分かる程度。長久手村から藤が丘へつながる道路は、クルマのすれ違いすら困難なほどの細い山道が一本あるだけだった。
現在では想像つかないほどの山村だった当時の長久手は、自然は豊かで夏には当たり前のように蛍が飛び交っていた。オタマジャクシ、タニシ、アメンボウ、メダカ、ドジョウ、カメ、シオカラトンボ、そんな水辺の生き物の宝庫だった。もちろん、水辺の生き物だけでなく、その他の昆虫や動物が生息しやすい森と水に恵まれていた。

蛍を見つけた瀬戸市のとある場所は、名古屋市内からはクルマで1時間ほどの場所。たった、1時間走るだけで深い山にたどり着く。もちろん、道路が整備されたから短時間で来られるようになった場所ではあるが、こんな近くにまだ蛍が生息できるほどの自然があったことが嬉しい。
小川と並走する道路の路肩にクルマを停めてしばらく蛍鑑賞を楽しんた。無防備な蛍は私の手の届く場所をのんきに飛び交っている。素手で簡単に捕まえることができたが、スグに逃がしてやった。