あるお客さまから「JAZZを聴きに行きましょう!」と誘われた。確かに私は音楽が好きだが、ジャズというジャンルは聞こえてくることはあっても聴いたことはない。しかし、こんな機会こそが人生で新たな経験をする絶好のチャンス。「ひょっとしたら、隣で退屈そうな姿をお見せしてしまうかも・・・。」と、正直に伝えながらOKの返事をした。すると、お客さま自信も特にジャズを嗜むわけでなく、知人から誘われたのだそうだ。そこで、「せっかくなら加藤さんも一緒にチャレンジしませんか?」と、そんないきさつだったのだ。そこで私の顔を思い浮かべていただけたことが嬉しい!

f6bb4deb.JPGさて、仕事を終えて実際に行ったところは俗に言う「ジャズ喫茶」だった。しかし、バンドの生演奏ではない。では、どうやって聴くかといえば、ただのCDなのだ。確かに、店内の壁一面に納められたCDに圧倒された。
通常の喫茶タイムでもきっとそれらのCDの音楽が店内に流れているのだろうが、、夜になって完全に仕切りなおして「ジャズ講座」という形で開場するわけだ。
ワンドリンクにスイーツが付いて1500円。代金は入口で支払い、各自カウンターでドリンクを受け取って席に着く。通常はカウンターに、テーブルが4〜5卓というカフェなのだが、今日は店内をレイアウトしなおしておよそ50人のリスナーが席に着いていた。
さて、開演。司会者がマスターを紹介し、マスターがマイクを受け取るとさっそくジャズ講座は始まった。今日のテーマは、「偉大な3人のジャズピアニスト」。マスター曰く、「現役のジャズピアニストの実力者3人を挙げろといわれたら、ジャズファンのほぼ誰もがその名前を言うであろうという3人です。」と。3人とは、ハービー・ハンコック、チック・コリア、キース・ジャレット。ジャズを聴かない私にとっては当然のことながらその誰の名前も聞いたことがなかった。
3人のCDアルバムの中で、マスターが選曲したそれぞれ3曲の計9曲を90分かけて聴いていくという企画。曲に対する印象や、まったく独断で感じたその背景、また、曲にまつわるご自身のエピソードなどをセンスの良いギャグを交えながら紹介していくという展開。
始めのうちは、やはり退屈だった。理由は、いわゆるスタンダードナンバーだったからだろう。リズムに体は反応はしているものの、脳は別の場所に飛んでいた。ついさっきまでしていた仕事のこと、読みかけの本の展開、次にラウンドするゴルフコースの戦略計画、また空腹だったせいか近所のラーメン屋さん検索をしたり・・・。我ながら、まったくふざけた客である。
しかし、3曲目が始まった瞬間に私の魂はジャズ喫茶に戻ってきた。その間、わずか4分の1小節ほどだったと思う。ピアノソロのその曲の、音符でいうなら3つ目のオタマジャクシが刻まれる頃だった。シンプルなメロディーに隠れる深い味わいに吸い込まれていった。
それからの1時間は自分でも信じられないほど自然にジャズを聴くことができた。「これもジャズのジャンルに入るの?」という曲もあり、どちらかというと私の魂はそれらに反応していたような気がする。

聴きながら「なぜ私は今までジャズを聴かなかったのか」ということにも気がついた。それは、到底真似ができないからだ。ピアノもドラムもベースもサックスも。どれをとっても自分ではこれぽっちも真似できそうにない。
これまで聴いてきたロックやポップスは、なんらかの形で自分のものにできそうな気配があり、それが曲に興味を持たせていた最大の要因だったと思う。ところが、ジャズはといえば全く不可能!そう言い切れるほど自分の音楽の技量の範囲ではない。そういう意味ではクラシックも同様だろう。管も弦も打も、まったく参加できそうにない。

今日の音楽は、これまでの自分の音楽観をガラリと変えてくれたかもしれない。誘っていただいたお客さまと、そのお客さまを誘ったお知り合いの方と、そんなご縁に感謝すべき夜だった。