今日、大変な事故に遭遇した。ひとりのドライバーとして、また子を持つ親としてあらゆる気持ちが交錯し、とても辛い出来事であった。

出先からレイブリックへ帰る途中のこと、「この角を曲がればレイブリック」というほどお店から近い場所で起きた事故だった。

driverecorder片側一車線、黄色いセンターラインで路線バスが往来する道路を私は走行していた。私の数十メートル前には白いワゴン車が走っていた。ワゴン車は右側の路地に入ろうと右ウインカーを出した。対向車がいたので速度を緩めながら路地に近づいていた。一台の対向車が過ぎるタイミングでスっと右折するよう、うまく速度を調整していたように見えた。それはとても自然な動きだった。
路地への曲がり角の手前10メートルほどの左側の歩道に二人の子どもが居た。(後で分かったのだが)小学校低学年の少年と、もう少し小さな女の子だった。二人は自分達の右から走ってきた白いワゴン車が通り過ぎるのを見計らったように道路を横断しようとガードレールの切れ間から一気に飛び出したのだ。左側から来る黒っぽい乗用車には気がつかずに・・・。

次の瞬間、ほんの少しだけダッシュが早かった少年だけが乗用車のボンネットに弾かれて宙に浮いた。乗用車のドライバーも飛び出して来た子供たちに気づいたのか、遠くからみていた私には急ブレーキで停止できるギリギリ直前にぶつかったように見えた。ところが現実には少年は6〜7メートル先に跳ばされた。停止する直前のほんの僅かの速度だったかもしれないが、それが走っている自動車の持つ強烈なエネルギーなのだろう・・・。

私は反射的にブレーキをかけていた。そして停車したのはちょうど少年の真横あたりだった。車道に転がり落ちた少年はその瞬間おそらくうつ伏せだった。しかし、本能的に更に車道から逃げようとしたのだろうか、起き上がろうとするような素振りに見えた。反対車線の車道のど真ん中ではあったが、私は既にハザードを出し、クルマから降りて少年に駆け寄っていた。歩道縁石近くの車道で這い蹲うようにしていた少年を私は膝をついて抱きかかえ、半身で支えるように仰向けの楽な体勢に変えてやった。

「もう動かなくていいから!もう怖くないから、このまま楽にしてていいよ!」
少年はなにも言わず動きを止め、ふっと落ち着いたように見えた。

ほんの十数秒の間の出来ごとなので、正確な順番は覚えていないが、私は既に片手で119番をコールしていた。ちょうどその頃、黒っぽい乗用車を運転していたドライバーが携帯電話を持って近づいてきた。私は「大丈夫です。今救急車を呼んでいますから。」と短く告げた。とくに当事者のドライバーの対応が遅かったわけではない。ほんの何秒かの差で私が先に少年にたどり着き、ほんの何秒かの差で先に携帯電話に手が伸びていただけのこと。当事者よりもほんの僅かだけ冷静だった人間のほうが、ほんの僅かだけ早く行動できたのは確かかもしれない。

「救急ですか?消防ですか?」から始まる119番の質問に、私はできるだけ的確に答えられたと思う。少年の容態、現場の状況、詳しい場所等々。

救急車を待つ間、ほんの僅かだけ少年と会話を交わした。きっとそれは少年を励ますというより、私自身が少年の意識が無事であることを確認したかったのだろう。

「ボク?名前は?」
小さな声で聞き取れなかったが、彼は確かに自分の名前を言えた。
「よし、分かったよ。もうすぐ病院に連れてってあげるから頑張れよ!」
「(言葉ではなく首で)うん・・」
「どこが一番痛い?」
(無言)
「そうか、いろいろ痛くて分かんないか?」
「(もう一度首で)うん」
「よし、よーく分かったからもうラクチンにしてろな!」

そのまま何分経っただろう。アチコチの擦り傷が痛々しいが、少年は目を閉じたり瞬きをしたりしながら私の腕の中で静かに耐えていた。そして救急車が到着し、隊員の腕にバトンタッチした。

居合わせたご近所のみなさんが少年のご家族に連絡をとり、少年と共に救急車に乗り込み、走り去ったところで私はその場を後にした。

会社に着いてもしばらく落ち着かなかった。ふと見るとズボンに血が付いていた。それはちょうど少年の小さな左手が置かれていた場所だった・・・。

事故の原因、そして問われる責任、当事者にはこれから解決していかなければならない問題はとても重くのしかかるだろうが、私としてはとにかく今は少年の無事を祈るのみ。怪我の具合は全く分からないので無責任なことはいえないが、どうか怪我が最小限のものであってほしいし、そして一日も早く回復してほしい。