排気温度警告灯に関する修理は、国産車の整備に従事している頃はほとんど無縁だった。1992年に初めて輸入車に触れるようになり、その後は頻繁に関わるようになった。その当時はフォルクスワーゲンとアウディを扱う販売店でメカニックをしていたのだが、ちょうどゴルフ2あるいはジェッタで『警告灯が点く』ということを経験するようになった。高速道路を走行中に点灯し、速度を落として走行していたら消えるという現象。温度上昇の感知が敏感すぎて、とくにまだ異常の範囲に達していなくてもランプが点灯してしまうというものだった。ユーザーさんに、『エンジンの調子は?』と尋ねても『特に調子が悪いとは感じない』という返事がほとんどだった。それで、先ほどのような『敏感すぎる』という説明をしたものだ。
ただ、実際にスパークプラグやプラグコードの劣化、またはディストリビューター周辺のトラブルが原因で失火することより排気温度が上昇するケースもあった。これらのトラブルは理論上は国産車でも同じことなのだが、やはり消耗品の劣化のペースが違うのだろうか、輸入車を扱うようになってからはやはり経験する頻度は多くなった。
話は『過敏』あたりに戻るが、1995年にランドローバーやローバーカーズ、あるいはMINIを扱う販売店に移ってからは更にいろいろなケースを経験するようになった。まず排気温度センサーの断線による警告灯の点灯、そして警告灯を点けるためのユニット(リレー)の不具合。もう『何でもあり』の状態。当時のディスカバリー・シリーズ気離ソリン車のユーザーさんはかなりの確率で『排気温度警告灯点灯』を経験していらっしゃるのではないだろうか。やはり、失火などにより実際に排気温度が上昇したというケースよりも、圧倒的に警告灯回路のトラブルのほうが多かった。
そんなはた迷惑な警告灯もいつからか無くなっていた。ディスカバリー・シリーズ気盧能モデルあたりは、触媒直後の排気温度センサーの取り付け穴にはただのボルトが捻じ込まれていた。その昔、ガソリンエンジンがキャブレターの時代、その調整如何では燃料が濃くなり、排気温度が上昇して触媒が加熱して車両火災の原因になる可能性もあった。しかし、燃料噴射の電子制御化が進み、さらに緻密な制御が行われるようになるにつれ、排気温度の上昇の確率は大幅に減った。実際に触媒が真っ赤になるほど排気管が加熱したランドローバーを見たことはあるが、そのエンジンはとても走行には耐えられないほど不調を抱えていた。アクセルを踏んでも『ボッボッボッボッボッ!ポッ!パンッ!パンッ!』といった具合で吹け上がらず、負荷が掛かるとエンストしてしまってとても走れなかった。
そんなふうに、排気温度警告灯の点灯に気づく以前に、エンジンの不調を体感するほうが早かったのだ。

cd90bcd3.JPG写真はクラシック・レンジローバーの排気温度警告灯の制御ユニット。左右各バンクにひとつづつ排気温度センサーがあり、それぞれにユニットが存在する。ご覧のとおり日本製。日本の法律に合わせるために日本企業が対応してパーツを用意し、純正品番が付けられている。きっと欧州メーカーからすれば『オイオイ、こんなものを要求するのは世界中で日本だけだぞ!日本の都合は日本で解決してくれ!』と言いたくなるほど厳しい保安基準だったのだろう。