300Tdiと呼ばれるディーゼルエンジンは、正規輸入車としては1995年から1998年まで発売されていたディスカバリー・シリーズ1に搭載されていた。ディスカバリーがシリーズ2にモデルチェンジしたと同時に、日本へのデリバリーはガソリン車のみとなった。
輸入期間としてはとても短い間だったが、ディスカバリー・シリーズ1のディーゼル車はとても人気だった。新車販売価格は、ディーゼル車もガソリン車も同じだった。ところが、数年後に中古車になったときには、ディーゼル車のほうが高く販売されていたほど。人気が高く台数が少ない故の現象だった。

人気の原因は、おそらく自動車税や燃料代のランニングコストを抑えられることだっただろう。しかし、我々ランドローバーの整備に携わる者の視点からは、必ずしも圧倒的なアドバンテージがあるようには思えなかった。
というのも、300Tdi特有のウィークポイントがあったからだ。ファンベルトを張っているオートテンショナーにガタが出やすく、少なくとも数年に一回は交換の必要があった。それならまだマシだが、テンショナーのガタによってベルトが外れたり切れたりして二次被害に至り、余分な出費を強いられるケースも少なくなかった。
そのほかにも、フューエルリフトポンプからの燃料漏れも多発していたし、ブレーキのバキュームポンプやパワーステアリングのベーンポンプなどの不具合も多かった。また、新車で装着されたいたタイミングベルトも消耗が早く、7万キロを目安に交換が必要だった。不運にも、5万キロそこそこでタイミングベルトが切れてしまった例もある。
もちろん、ガソリン車もメンテナンスは必要なのだが、ディーゼル車の構成パーツのほうが遥かに単価が高く、一度の修理で自動車税の差額など帳消しになることも多かった。
(もっとも、パーツの信頼性は年を追うごとに向上し、現在、規制区域外で維持されているディスカバリー300Tdiは、故障という意味では比較的落ち着いた時期を迎えているのではないかと想像している。)

その後、NOx・PM法の制定により、レイブリックを含む愛知県のほとんどは規制区域に入り、周辺のユーザーさんはやむなく代替えに追い込まれた。もちろん、岐阜県や三重県など、身近な東海地方でも規制に入っていない地域もあるのだが、ここ数年でディーゼルのディスカバリーはすっかり姿を消した。

しかし、ディフェンダーの300Tdiは現役そのもの。当時の並行輸入車のほとんどは規制の対象になっていないため、この地域でも車検を受け続けられるのだ。
更に、ディフェンダーの場合、ディスカバリーと同じ300Tdiというエンジンを搭載していながら、ファンベルト周辺のトラブルは圧倒的に少ない。エアコンが標準で付いていない仕様だったため、ベルトの取り回しが異なり、それが幸いしているようだ。
トラブルも少なく、車検も受け続けられる。そんなわけで、現在ディフェンダーのディーゼル車を所有しているユーザーさんはまだまだ乗り続ける気満々の方が多い。

CA392545優秀なディフェンダーでも、十数年も経てばさすがに当時のディスカバリーに似たトラブルが起きることもある。
今日の修理はウォーターポンプのガタによる交換。ガタの発生により、インペラー(羽)が内壁に擦れた痕が確認できる。もっとも、それ以前に、ベルトが外れかかり、亀裂が入ってアイドラプーリーに巻きついて異音を発生したところでユーザーさんはクルマを停めた。切れ始めたベルトがエンジン内で暴れることで、近くの配線を切断してしまったりすることもある。そう考えれば、故障の被害が最小限に留まった幸運な例ともいえる。

オートテンショナーによって、ファンベルトはいつもパンパンに張られている。もちろんそれが故にベルト調整のメンテナンスの必要はない。ただ、ウォーターポンプやオルタネーターのプーリーには絶えず張力が掛かっている。結果的にはそれがベアリングの消耗を早めていることは否めない。
ベルトがパンパンに張られているので点検はしにくいが、時々テンショナーを緩めて各ベアリングのガタを触診するとよいだろう。