午前中に品川から名古屋への新幹線に乗った。私の席は博多に向かって一番左の窓側。三列と二列に分かれた三列のほう。隣の二つの席は空席。バッグを置いて好き勝手に使える。
週末の午前中ということもあって乗客の様子もいつもとは違う。しかも、学校は夏休み。
新横浜で大勢の人が乗ってきた。幸い私の隣には誰も座らなかった。これで名古屋まで隣を気にすることなくリラックスできる。
少し深めに背もたれを倒そうと思った瞬間に後ろの席に親子連れが座った。あまり大胆に倒すのもどうかと思い、適当なところで握ったレバーを戻した。
親子連れは三人。小さな男の子と間違いなく私よりも若い両親。男の子を真ん中のシートに座らせている。声の感じからすると男の子は三歳ぐらいだろうか。子供は元気だ。特別元気な子供ではなくても、やはり元気だ。何故だか子供は電車の中でも、しかもすぐ隣の母親に向かって大きな声で話しかける。きっと私よりも何列も前の席の人までその様子を伺い知ることができるだろう。
私も親になるまでは、きっとこんな場面では耳栓が欲しくなっていただろう。あるいは、別の車両の空いている席を探していたかもしれない。しかし、勝手なもので自分に子供ができてからは立場が全く変わってしまうもの。自分の子供がもしかしたら誰かが迷惑に感じているかもしれない程度の大きさの声で話をしていたとしても、「どうか育ち盛りの今だけは許してほしい」などと思ってしまう。もちろん、今の私も後者のほう。後ろの席の元気な会話に、つい微笑んでしまった。
ちょうどその頃、前から車掌さんが検札に回ってきた。車掌さんは女性だった。年齢の話は失礼だが、もしかしたらまだ二十代かも。特に容姿を凝視したわけではなく、声のトーンからの推測。私はICチケットの控えを出した。手渡したのがエクスプレス予約の控えだったこと、そこに小さな文字で印字されている予約番号で乗車頻度が分かるのだろうか、「いつもご利用ありがとうございます。」と検印しながら声を掛けられた。JRのみなさんには失礼だが、これまでは列車の中ではこんなふうに優しい口調で言葉を掛けられたことはなかった。しかし、逆に言えば航空会社スタッフの対応はある種のマニュアルだろうが、きっと今日の車掌さんは人格なのだろうと思った。差し出がましいようだが、彼女の功績をなんとかして上役の方に伝え、報酬や出世に反映させてやれないものかと感じたほど。こんな優秀な乗務員さんには、もうとっくにボーナス査定で反映されているかもしれないが・・。
何行かで書いたこの一連の動作と抱いた感想はほんの数秒間の出来事。車掌さんは既に後ろの親子連れの席に移動していた。すると今度は「ご旅行ですか?」と。すかさず、真ん中の男の子が「山口のおばあちゃんのところにお泊りにいくんです!」と。きっと山口の家は現実的にはおじいちゃんの家なのだろうが、うちの子もそうだが、だいたい子供にとっては田舎の家はおばあちゃんの家になる。そんな屁理屈はともかく、男の子の返事の語尾が丁寧語だったのが余計にかわいらしい。男の子は更に何かおばあちゃんちで起こりうるであろうことを説明していたが、車掌さんは上手にかわして会話を収束させていた。「ほんとう、よかったねえ。楽しんできてね♪」と。
ネクタイを緩めたビジネスマンで占領された昨晩の新幹線とは別の列車に乗った気分だった。

CA3H0315さてさて、少し疑問があるので話を品川駅に戻そう。これは駅のホーム。メンテナンスのためにホームの下には広いスペースがある。当然のことだが、計算されたとてもしっかりとした建造物だ。ここで私の疑問。なぜ、こんなビルの中を通る線路上にも砂利が敷かれているのだろう。コンクリートのままでも良さそうなものなのに。どんな理由があるのだろう?