小学校の頃、夏休みの宿題で読書感想文があった。私の記憶では、6年間一度も提出しなかった。それもそのはず、全く本を読まなかったので感想文など書けるはずはなかった。
本を読み始めたのは中学校に入ってから。初めて一気に読んだ本は北杜夫先生の「さびしい乞食」。童話のようなほんわかした物語。その後、「さびしい」シリーズを読みきった後にマンボウシリーズを数冊読んだ。
中学二年の時に短い間だけ通った学習塾の先生から「北杜夫は『楡家の人びと』以外はくらだないから読むな」と言われたが、その「楡家の人びと」は当時の私には全く面白くなく、数ページ捲っただけで既にお蔵入りしてしまっていた。

そういう意味では、今日のブログは人生初の読書感想文となるわけだが、やはり全く自信がない・・。参加賞の500円の図書券狙いということで。

課題図書は先月あるお客さまからいただいた、五木寛之先生の「雨の日には車をみがいて」という小説。クルマ好きの主人公が成長し、出世を重ねる過程で乗り替えていくクルマと、それにまつわる特に女性がらみのエピソードがストーリーとなっている。
小説は全9章から成り、それは第9章を除いてはイコール主人公の車暦でもある。
その9台とは、シムカ1000、アルファロメオ・ジュリエッタ・スパイダー1.3、ボルボ122S・アマゾン、BMW2000CS、シトロエン2CV、ジャガーXJ6、メルツェデス・ベンツ300SEL6.3、ポルシェ911S、サーブ96S。
初めに言っておくが、正直なところ、レイブリックのお客さまがわざわざ私のために書店で取り寄せてまで用意してくれた小説ということもあって、いつかレンジローバーが登場するのかと思って読んでいた。ところが、最後の最後までレンジローバーの「レ」の字すら出てこない。そうではなく、「人とクルマ」という意味で、きっとこの本を私が気に入るだろうと感じてくださったお気持ちがとても嬉しい。
そう、結局レンジローバーは登場しなかったが、それぞれのクルマにはとても興味を惹かれた。もっとも、この小説は1960年代から始まる物語なので私のクルマ人生とは全く世代が異なる。そのため、登場するクルマは、現代では既にクラシックカーばかりなので、いくら私が興味があったところでそのクルマに乗ったことなどない。しかし、同じブランドのクルマや、世代が異なるだけで同じ車種に乗ったことはある。つまり、世代こそ異なるものの、主人公と同じ観点でそのクルマを見ていることには違いない。
ちなみに、登場する9台のクルマと、私の車暦でオーバーラップするブランドは、アルファロメオ、BMW、ジャガー、ポルシェである。登場する順番ではジャガーとポルシェが逆転しているが、主人公が成長と共に乗り替えていったクルマは、私の成長過程における趣味趣向ととてもよく似ていることが分かる。
私はこの小説を読むまでシムカ1000というクルマを知らなかった。しかし、免許をとって初めてのマイカーとして選ぶにはまんざら相応しいと思った。その理由は排気量。免許をとっていきなり大排気量の暴れ馬を選ぶ人も少ない。自分に乗りこなせるだけのポテンシャル以上のものは、逆に不安要素であり、ハンドルを握ることの楽しさはいつの世代でも身の丈にあったクルマがちょうどいい。
私の場合は経済的な理由もあったが、初めてのマイカーはシムカと同じ1000ccだった。トヨタ・パブリカ・スターレット。車検が数ヶ月だけ残っているポンコツを、親の知人から1万円で譲りうけたものだった。結局、車検が切れるまでの短い期間しか乗らなかった。それは、車検を通すためにはアルバイトではまかなえないほどの費用が掛かりそうだったからだった。そして、その価値がないと感じたからである。
もし、私が1960年代に免許をとり、もちろん経済的な問題もクリアしており、その時既にこの小説を読み終えていたなら、主人公に影響されてシムカ1000を買っていたかもしれない。
さて、全9章を読み終えて、私がもっとも印象に残ったクルマはボルボ122S・アマゾンだった。物語では、主人公が白のアマゾンを運転しているときに、小柄な女性が運転する赤のアマゾンと出会うというもの。アマゾンとは、レンジローバーとは全く正反対でベルトラインが高く、小柄な女性ではウインドゥから頭の半分しか出ない。主人公は小柄な女性が運転席に座っていることに気がつかず、まるで無人のアマゾンが走っているようで、驚きのあまり追いかけてしまった。そして合図を送ってクルマを停め、運転席から現れた幼そうに見える女性と出会うというストーリー。
アマゾンってどんなクルマだっけ?今はそんな疑問もWEBですぐに解決できる。私はそのスタイルに一目惚れした。図太くいかにも頑丈そうなボディーと、薄っぺらいキャビンとのバランスが不恰好でなんとも素敵である。
いいなあ、このクルマ。どこかに上物がひっそり仕舞われてないかなあ。レストアして乗ってみたい。そんな衝動に駆られたが、ダメダメ!私には作りかけのディフェンダー90もあるし、クラシック・レンジローバーのフルレストアもしたいし、現状ではとてもランドローバー以外に情熱を奪われる余裕などない身分。プルプルッとアマゾンを振り払おうとしたが、まだその辺に引っかかっている。つまりそれぐらい印象に残ったわけである。

小説を読み終え、私も自身の車暦を物語にしてみようかと一瞬思ったが、きっと無理であることが分かった。主人公はどのクルマも心底愛していた。夜な夜な撫でるようにワックス掛けをしたり。私もクルマは好きだが、ワックス掛けは年と共に手抜きをするようになった。こんなオーナーが主人公では素敵な物語にはなり得ないだろう。

おわり


CA3H0463オートクラフトの店内改装の様子。写真はそのほんの一部分だが、今までのオートクラフトにはあり得なかった空間。夏休み中のスタッフもビックリだろう。早くお客さまにも見てもらいたい。今も職人さんたちが頑張ってくれている。細かな部分の仕上げは残るが、とりあえずあさってにはかろうじて営業が再開できる見通し。


久しぶりに曲にしよう。
初めてのマイカー、パブリカ・スターレットでは音楽を聴いた記憶がない。気に入ってなかったからほとんど乗らなかったし、もしかしたらカセットデッキすら付いていなかったのかも。
その次に乗ったのは母親からのおさがりのカローラセダン。そいつにはアルミホイールと太いタイヤを履き、ケンウッドのカーコンポを組んだ。こいつはなかなかご機嫌なクルマで、毎晩のように走り回った。シャキシャキの大音量でよく聴いたのは、当時、名古屋の栄のディスコで流行っていたこんな曲だった。
David Bowieの「Modern Love」。