オートクラフトのデモカー、クラシック・レンジローバー4.6に乗り込んでクーラーのスイッチを入れた。日中はもうすっかりクーラーに頼らなければならない気温である。しかし、吹き出し口からは生温かい風しか出てこない。
ボンネットを開け、点検をすると、コンプレッサーは回っている。電気回路に異常はないようだ。となるとガス漏れか。
クラシックレンジローバーガス回路を点検する間もなく目についたのは、コンプレッサー裏側のオイルの滲み。クーラーのガス回路にはコンプレッサーの潤滑のためのオイル(コンプレッサーオイル)が封入されており、ガスと一緒に回路内を回っている。なので、ガス漏れをしている箇所があれば、同時にオイルも滲み出てくるのだ。
蛍光剤をガスと共に入れ、ブラックライトを当てて蛍光剤の漏れ具合を検知する材料もある。また、ガスを感知する電気的なテスターもある。しかし、このオイル漏れを見る限り、この周辺からのガス漏れは間違いない。フランジ部分にスパナを当てると、何箇所かが少し緩んでいた。それらをしっかりと締め付け、少量のクーラーガスを充填。その状態でテスターを使って漏れを確認。とりあえず、大きな漏れはないようで、テスターは反応しない。そのままガスを追加し、室内から冷たい風が出ることを確認。
漏れがここからだけなら今回の処置でしばらくは大丈夫だろう。なにせ20年選手、至るところが劣化していて当たり前。しかも、46D型の4.6リッターエンジンに乗せ換えているため、ワンオフの継ぎ接ぎ部分もある。それだけに予想外のトラブルも可能性としては含んでいる。
とにかく、一度これで様子を見てみよう。

さて、頻繁にクーラーという言葉を使ったが、クラシック・レンジローバーの1993年モデルまでは「エアコン」ではなく「クーラー」である。共に、夏場に室内を冷やすことは同じだし、だいたい使い方も同じ。しかし、我々はちゃんとした区別をしている。
昔のクルマには冷却設備はなく、ヒターのみだった。私が子供の頃、加藤家のマイカーにもクーラーはなかった。なので、夏場は当然だがウインドウ全開。信号待ちで隣に並んだ乗用車の窓がピッシリ閉まっていると、母が羨ましそうに「お隣さん、クーラー付きよ!」とチラ見していた。
数年後、買い換えたクルマにはクーラーが装着されていた。その時点でのクーラーは、助手席の膝元に冷やす専用の機械が吊り下げられていた。クルマには相変わらずヒーターのみ、追加でクーラーが取り付けられているスタイルである。
やがて、各車標準でクーラーが付くようになった。というか、その頃からクーラーではなくエアコンに変わっていった。エアコンは、室内を冷やしたり温めたりをひとつのシステムとして行うもの。なので、温かい空気を出しながら除湿することもできる。現代のクルマには当たり前の装備である。
そんなことで、クラシック・レンジローバーもエアバッグ付きモデルの最終型だけはエアコンだが、それ以前は全てクーラーであり、ヒーターとは独立したシステムなのである。

もうひとつ、ガス漏れの話を。エアコンにしろクーラーにしろ、冷媒をコンプレッサーで高圧にし、それをエキスパンションバルブを通すことで圧力を開放し、その圧力差によって低圧側を冷やす。それが冷気の元となる。
例えば、水道のホースの途中を指で摘むと、その摘んだ場所より手前のホース内の圧力は上がり、それ以降の圧力は下がる。その摘んだ場所がエキスパンションバルブである。
そんなふうに高圧側の圧力は高く、当然、回路を構成するホースやジョイント部分に掛かる負担は大きい。しかし、それはエンジンが掛かっていてコンプレッサーが働いているとき。コンプレッサーが止まっているとき、もちろん、エンジンが掛かっていないときもそうだが、高圧側と低圧側の圧力差はなくなる。だからといって、大気圧ではない。そもそも4〜5barの圧力が掛かっているので、実際のところホース類には絶えず圧力による負担が掛かっているのだ。つまり、冬場に何ヶ月もエアコンを使わない時期であっても、内圧によって弱った部分から漏れが発生し始めることもある。
ちょうどこの時期、シーズンで初めてエアコンを必要とするときに初めてエアコンが効かないことに気が付いたとしても、実は冬の間にすっかりガス漏れを起こしていたりもするわけだ。

ついでにもうひとつ余談を。
クラシック・レンジローバーの1993年モデルまでの、つまりクーラーの時代には、時々回路内で「詰まり」が発生した。エキスパンションバルブの細い通路に錆が詰まり、クーラーが効かなくなるという症状。回路内で錆が出る原因として私が推測していたのは、冬場に長い間クーラーを使わない時期に、回路内がカラカラに乾いてしまうこと。回路内をガスが巡っていれば、ガスと同時にコンプレッサーオイルでも潤滑される。なので、カラカラに乾かない。ガスとコンプレッサーオイルが巡らない長い時間に回路内の金属部分が錆び、シーズン初めに使い始めたときにその錆が一気に流れ出して細くなったエキスパンションバルブ部分で詰まるというわけ。
これを防ぐために私がお勧めしてきたのは、冬場でも時々クーラーを使うことである。オイルを循環させ、錆を発生させないためである。ジョイント部分のO-リングも乾燥しないため、劣化を防ぎ、漏れの防止にも一役買うであろうと考えている。


では、今夜も曲にしよう。
昨夜は1981年の松任谷由実さんの曲を選んだ。ちょうどその頃、松任谷由実さんと中島みゆきさんが同じような時期にアルバムを出すことが多く、松任谷vs.中島 というような企画が雑誌記事になっていたことがあった。詳しい業績は知らないが、レコードの発売枚数は松任谷由実さんの方が多かったのかな。
しかし、ちょうどギターを覚えたてだった私は、中島みゆきさんの弾き語りの方に興味があった。実際、私の姉は、アルバム「PEARL PIERCE(松任谷由実)」を買い、私は「寒水魚(中島みゆき)」を買った。
私は、中島みゆきさんの、超現実的な歌詞が好きだ。この曲も、まさに「みゆき節」である。
今夜は、中島みゆきさんのアルバム「寒水魚」から、「時刻表」。