スポーツカー一辺倒の私を、ある日友人が「今日はカルチャーチョックを与えてやるぞ!」と、名古屋市郊外の河川敷のオフロードに連れていってくれたのは、おそらく私が22歳の時だった。友人のクルマはトヨタ・ハイラックスピックアップのシングルキャブ。車高を上げてマッドタイヤで武装してあった。当時としては典型的なオフロード仕様。
今では乗り入れ禁止になってしまった大型河川の堤防沿いだが、当時は多くのオフローダーが自由に走り、自然にオフロードコース化していた。コースといっても、私にとってはそこに轍がなければとてもクルマが走れるとは思えないほどの烈しい荒地。「こんなとこ、下りられるのかよ!転がるぞ!」、と助手席で怯む私に、「楽勝、楽勝!」と、一気に下りきり、そして次の上り坂に向けて加速する。「登れるはずない!」、叫ぶ私の言葉など全く無視。アクセルを緩めることなくジャンプするほどの勢いで一気に登りきった。オフロードに入ってほんの数分で、確かに「カルチャーショック」を受けた。
体が慣れたあと、運転を代わってくれた。さっき友人が運転していたようなスピード感を保ちながら、あらゆる傾斜にチャレンジした。それはそれは楽しかった。絶対に無理だと思う傾斜にも轍がある。誰かはここを走っているのだ。それならこのクルマでも行けるかも?助手席の友人を見ると、「当たり前!」という顔をしている。余裕の笑みには「躊躇するんじゃねえ!」と書いてあるようだった。私は友人の笑みと、クルマの性能を信じてひたすら走った。
それにしても大胆な友人である。私の未熟な運転では、ひとつ間違えば愛車が横転していたかもしれない。
ひとしきり走ったあとは川原の浅瀬にピックアップを停め、狂った平衡感覚の余韻を感じながら空を仰いで深呼吸をした。最高に気持ちいい!

そんな爽快感を味わったにも関わらず、私はその後もスポーツカーに乗り続けた。サーキットや峠道を走ることをやめる、そんな選択はやはり私にはなかった。オフロードやクロカン四駆を否定するつもりはない。友人のおかげで全くなくなった。ただ、それ以上にオンロードが好きだっただけである。

そんな私がランドローバーに出会ったのは、それからおよそ8年後、1995年のことだった。2ndレンジローバーと、ちょうどマイナーチェンジされたばかりのディスカバリー(シリーズ1)、そして人気が失われないままモデルチェンジに追い込まれたクラシック・レンジローバー。それらと対面した私は、その時はまだランドローバー=クロカンのイメージは全く沸いてこなかった。ポルシェがサーキットではなく街でも似合うように、オフロードを走っていなくても絵になる、そんな印象だった。
その後、ランドローバーには、とてつもないオフロード性能があることを知った。私のクロカンに対する知識と経験なんてそんなものである。もしディスカバリーをあの河川敷に持ち込んだら、友人のピックアップを凌駕できる走りはきっとできるはず。実際にはディスカバリーでそれほど烈しいオフロード走行を経験したことはない。ただ、その実力をきっと備えているということを感じているだけで、ランドローバーは充分魅力的だった。

こんな動画を見るたびに、自分が惹かれた初めての四駆がランドローバーであったことの偶然に感謝したくなる。