私がランドローバーを取り扱うディーラーに転職したのは1995年。2ndレンジローバーがデビューした年だったのだが、モデルチェンジしたての新型車種の傍らでそのオーラを煌々と放っていたのは「Classic」だった。
1970年にデビューしたレンジローバーは、その後ゆっくりゆっくり進化し、実に25年の歳月を経てフルモデルチェンジに至った。その間、レンジローバーは唯一無二であり、レンジローバーでしかない存在だった。
1995年にモデルチェンジが行なわれた直後、初めはモデルチェンジ後のレンジローバーを普通にNEWレンジローバーと呼んでいた。しかし、じきに呼び名に関するアナウンスが届いた。「NEWレンジローバーのことをセカンド・レンジローバー、従来のレンジローバーをクラシック・レンジローバーと呼びましょう。」と。
そこでほんの少しだけ問題が起きた。1995年、2ndレンジローバーが発表になったあとも、まだクラシック・レンジローバーが新車で売られていたのだ。それは前後バンパーおよびサイドシルにエアロスタイリングキットと呼ばれるドレスアップパーツが装着され、1995年の新色、エプソム・グリーンとビアリッツ・ブルーが採用された限定車である。この限定車の名前がズバリ「Classic」だったのだ。
問題となったのは、「クラシック・レンジローバー」と呼んだときに、初代レンジローバー全般のことを言っているのか、それともその限定車のことを言っているのかが曖昧になってしまったことだった。
しかし、蓋を開けてみればそれほど混乱しなかった。我々はその限定車のことを「Classicのクラシック」とか、「Classicクラシック」と呼ぶことで両者の区別をつけるようになったのだった。

IMG_3586前置きが長くなったが、今週からオートクラフトではClassicのボディーリフレッシュが始まった。商品車として入庫し、各機関部分を点検したところ、メカニックが「このクラシックは凄いぞ!」と唸るほど過去の整備歴がしっかりしていた。オーナーさまの情熱と、メンテナンスを請け負っていたサービス工場のクォリティーが完全にマッチしていたような、そんな印象である。
大切にされてきたクルマであることは容易に見て分かるが、それでも外装には細かな傷や凹みがあり、若干ながら艶も後退している。そうなれば答えは簡単、外装をパリっと仕上げてしまおう!

どうせ全塗装をするなら他の色に変更も?と考えてみた。同系のブルー系だとして、私なら1997年からのオックスフォード・ブルーかその後のオスロ・ブルー、あるいは2006年からのバッキンガム・ブルーを候補に挙げた。何もブルー系に拘る必要もなく、それなら人気のベルーガ・ブラック、あるいはメタリックのジャバ・ブラックあたり。
などなど、スタッフの意見も取り入れながらいろいろ考えてみたが、結局「Classic」限定車を尊重し、ビアリッツ・ブルーのまま仕上げることに決めた。
IMG_3692いつものように、まずルーフから取り掛かり始めたところ。もしかしたら、その歪みは製造時からのものもあるかもしれないが、ペイントエンジニアが下地を整える過程でご覧のように修正された。白いのはパテ。凹み部分を埋めた結果がこの状態である。手のひらで触って凹凸を感じなくなるまで丁寧に磨き続ける。

IMG_3701表面処理が終わったら次はサフェーサー。塗料が付きやすく、そして色の発色をよくするための大切な工程である。暗い色を塗る場合には黒のサフェーサーを、明るい色を塗る場合には薄いグレーを使う。そういえば、油絵でも同じような手法を使ったような気がする。

ビアリッツ・ブルー、当時はその鮮やかさが眩し過ぎてクラシックらしくないとも言われたが、今となってみればそう言われていたことが不思議なほど。「Classic」としてクラシック・レンジローバーのエピローグを飾るには、そのエレガントさがとても似合っていると私は感じている。