私がまだ会社勤めの頃の出来事を。
まだペーペーの頃、扱いにくかった私のことを煙たがる上司もいれば、逆に極端にかわいがってくれる上司もいた。もちろん、かわいがってくれる上司の言うことは素直に聞けた。
ある日、本社から統括部長が専用の社用車で私がいる営業所にやってきた。私は信頼する上司である課長から、部長のクルマを洗車しておくよう指示された。部長が滞在する数十分の間に仕上げておくようにと。社用車はこまめに洗車がされているようで、それほどひどく汚れていない。それでも昨日降った雨の影響でうっすら砂が浮き、タイヤの後ろには少しだけ泥はねがあった。私は手際よく洗車をしてそれらを落とした。
ほぼふき取りを終えた頃、部長が事務所から出て来られた。そして、「忙しいのに悪かったね」と声を掛けてくれた。もちろんその言葉はとても嬉しかったが、若輩者の私にはその一連の行為の本意がまだ理解できていなかった。課長の指示なので大きく疑問を抱くことはなかったが、心の奥底では「営業所としての点数稼ぎ?あるいは、課長の親心で私に点数稼ぎのチャンスを下さったのか?」などと、そんな愚かなことを考えていたのだった。

ある日、通勤途中で課長が運転するクルマと出くわした。忙しい課長のことだからきっと手が回らないのだろうが、クルマは少し汚れていた。課長、綺麗にしててくださいよ!それより、言ってくれれば洗車ぐらいするのに!と思った。そこで、ハっと気が付いた。そうか、前に部長のクルマを私に洗車させたのはそういう意味だったのか、と。

オートクラフト店長の神田は靴などのアイテムに拘る。以前、私の靴が汚れているのを見かねて磨いてくれたことがあった。以来、私は注意してこまめに靴を磨くようにしている。私の身だしなみの乱れは私だけの問題ではない。スタッフや、スタッフの家族に恥を掻かせることになりかねない。

ということで、今日は仕事が終わってからヴェスビウス号の洗車をした。

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