レンジローバークラシック・レンジローバーは「スウィベル」と呼ばれるステアリングシステムが使われている。当時のランドローバー車のラインアップはディフェンダーとディスカバリーの三車種で、ホイールベースこそ異なれど、サスペンションやブレーキ、ステアリング関係は同様の構造がとられていた。各車のセッティングによって全く同一のパーツが使われているわけではなかったが、それでも基本構造はほぼ同じだった。このスウィベルもそうで、1970年にクラシック・レンジローバーが登場するより以前にディフェンダーの前身のランドローバー・シリーズ時代から踏襲されてきた構造である。
このドーム型をしたハウジングの上下にスウィベル・ピンというパーツがあり、それがステアリングを左右に切る場合の軸となる。また、このハウジングのことをスウィベル・ハウジングと呼ぶ。
スウィベル・ハウジング内にはドライブシャフトから繋がるCVジョイント(等速ジョイント)が収まり、オイルで潤滑されている。従ってオイル交換も必要になるので、スウィベル・ハウジングにはフィラー(注入口)とドレン(排出口)の各プラグが存在する。例えば車検の際などにそういったメンテナンスを行うのだが、粘性の高いオイルが劣化して更に固くなり、通常、プラグを抜いてもなかなか落ちてこない。仕方ないのでそのまま翌日まで放置をするような格好で仕事の段取りを組み立てるわけだ。
スウィベルピン・ハウジングもオイルが入っている以上はオイルシールの劣化などによってオイル漏れが発生する。その延長線上で大きなトラブルに発生することもあった。スウィベルピン・ハウジング内には片側で約370mlのオイルが入っている。それほど多い量ではない。そのオイルが漏れ始めたときに対処をすれば良いのだが、完全に漏れ切ってしまうまで放置される例も少なくなかった。絶対量が少ないだけに、「漏れていたけど、最近は気にならなくなったなあ」とやり過ごしてしまうのだ。つまり漏れ切ってオイルが空っぽになるわけで、やがてはCVジョイントが焼きつき、バラバラに砕けてしまうのだ。
スウィベルの構造を理解していない整備工場で車検を行なえば、4年6年とメンテナンスが行なわれずに過ぎることもあり、そういった重大トラブルに繋がる例も少なくなかった。

スウィベル・オイルは、1997年ごろからグリスに代わった。その時代にはクラシック・レンジローバーは生産が終了していたが、ディスカバリー・シリーズ1やディフェンダーはまだ現役だった。スウィベルピン・ハウジングからドレン・プラグが消え、グリスを注入するためのフィラーだけが残った。それと同時に、それまでオイルを使っていた過去の車両も、我々は随時グリスに交換していった。
オイルじゃないと逆にメンテナスがし難いという理由でグリスにすることを拒むオーナーも居たが、そういう意味では確かに一長一短あるのかもしれない。しっかり時間を掛け、古いオイルを抜いて新しいオイルを規定量注入する。それはそれは気持ちよい。そうやってご自身で定期的にメンテナンスをすることで、良いコンディションを保っているのだという実感があるのは確か。仮に分解する際にも、グリスよりオイルの方が取り扱いがずいぶん楽である。
ただ、グリスにすることで、オイルのように漏れることは少なくなり、CVジョイントのトラブルも格段に減ったのは事実。したがって、現在ではグリスでの潤滑が常套手段となっている。オイルシールに亀裂が入るなどしてグリスが一気に飛び出すなど、例外的なトラブルを除けば、スウィベルはメンテナンスフリーとなるわけである。