第四章 光と影より)

二月に入った。その日、私が外出先から帰るとスタッフから中野さんの会社から電話があったことを告げられた。「あ、でも中野さんからじゃなったですよ。女性の○○さんという方からでした。」 これまでレンジローバーに関することで代わりの方から連絡があることなど一度もなかった。すぐに折り返しの電話をすれば良いのだが、その間にもいろいろなことを考えてしまう。良くないことも。しかし、最後に中野さんに会ってからまだいくらも経っていないし・・・。緊張感に襲われながら電話をした。○○さんは事務員さんだった。
事務員さんは相談があると言った。レンジローバーを買い取ってほしいと。私はこの相談の真意を知りたかった。と同時に聞きたくもなかった。やがて事務員さんはこう続けた。「専務、亡くなられたんですよ。」
専務のレンジローバーはずっと加藤さんに面倒を見てもらってきたから、最後も加藤さんにお願いするのがいいんじゃないかって、社長もそう言っていますし、と。

数日後、私は会社を訪ねた。そこで名義変更のための書類をいただき、その足で中野さんの自宅へ向かった。ガレージにはレンジローバーが停まっていたのだが、数週間前に私が届けた時のそのままの状態だった。あれから中野さんはこのレンジローバーに一度も乗ることなく旅立っていかれたのだ。今までだったら整備のあとには決まって「加藤さん、調子いいぞ。ありがとうな!」などと連絡があったものだ。最後にもう一度聞きたかった。

奥さまから鍵をいただき、レイブリックまでレンジローバーを走らせた。中野さんが毎日通勤で使っていた高速道路に乗って。

中野さん、こんなに調子いいじゃないですか・・・。

続く

レンジローバー