第五章 レンジローバーに捧ぐより)

翌日からというもの、気が付けば中野さん(仮名)が乗っていたナイアガラ・グレーのレンジローバーに乗り込んでいた。ただ座るだけだったり、実際に走らせてみたり。中野さんを通じ、レイブリックと私を育ててくださったクルマである。レイブリックが存在し続ける限り絶対にこのクルマを手の届く範囲においておこうと決めた。

自宅と会社の両方に屋根付き車庫があり、日射や風雨からは随分守られてきたクルマではあるが、なにぶんガレージが狭く、そのためだろうがクルマの四角や両サイドには無数の擦り傷があった。特に、左側後部はひどく、クォーターパネルの塗装はほとんど地肌が見えるほどにまで擦れていた。そういえば、会社のガレージのその位置には決まって何かのダンボール箱が積まれていた。毎日毎日、そっと触るように繰り返しダンボール箱に擦り続けてきたようだ。機能面の整備には妥協はなかったが、外観に関しては細かいことを気にされていなかった。
さて、この先レイブリックと共存させていくことを前提に、このレンジローバーをどう仕上げていこうか?そう考えた。普段から整備は怠っておらず、車検も受けたばかりで調子は良いし、せっかくだから外観もリフレッシュしよう!ボディーパネルのほとんどを補修する必要があるので、いっそ全塗装をしてしまおう。全塗装をするなら色を変えることも可能だが、中野さんが乗っていた頃のイメージを崩したくはない。そこで、当時まだ日本では非常に珍しかったボナティー・グレーを選んだ。ナイアガラ・グレーと比べると微妙に明るいが、イメージはそれほど変わらない。なんともいえない淡いグレーでランドローバーにはそういう微妙な色がとても良く似合うと私は思う。
中野さんなら外装のリフレッシュにここまで手を加えることはしなかっただろう。しかし、ここから先は中野さんとレイブリックとのコラボレーションだ。もしかしたら誰にも気付かれることのない色変更だが、それは我々だけが知っていることだとしてもいいじゃないか!

さっそく塗装工場へ色替えを伴う板金塗装作業を依頼したのだった。

続く

加藤ブログ