私は大学は建築科を出た。現在の仕事とは何ら繋がりはない。
大学4年の時、先生が進路の相談に乗ってくれた。大学のくせに、やけに就職率に拘ったところだった。偏差値が自慢になるような学校ではなかったので、せめて就職率でもという方針だったのかもしれない。とにかく、ゼミや卒研の先生は熱心に就職について世話をやいてくれた。

「加藤、どうするんだ?どういう会社がいいんだ?」
「先生、すみません。せっかく建築を学んだのですが、私は自動車の方面へ進みます。」
「おお、自動車か!私の知り合いにキャンピングカーを作っている奴がおってな、そういうところで設計をやるってのもいいな。紹介してやるぞ。」
「いや、先生・・・、そういうクルマじゃなくて、純粋に自動車を触りたいんです。」
「自動車の設計か!君はデザインが好きだったな。カーデザインかあ、この学科から進んだ奴は知らんが、まあ無駄にはならんわな。」
「いや、そうでもなくて・・・、つまり建築とは全く関係なくて、ごく普通のメカニックとして・・・」

漫才ではなく、本当にこんな会話があった。先生は私が建築科で学んだことをクルマにフィードバックできる「何か」を真剣に見つけようとしてくれていたのだ。

そりゃ、できるものならカーデザインなんてやってみたいことだが、私の能力ではとてもとても手が届かない世界であることは自分が一番よく分かっている。なんとか先生に理解してもらい、私は建築とは全く無縁のなんの変哲もない自動車業界に入ったのだった。


レンジローバー_スポーツここまでは余談だが、今日はカーデザインがいかに奥深いものかということについて。
写真は2010年にマイナーチェンジをした後のレンジローバー・スポーツ。右側のバリ・ブルーはマイナーチェンジ直後の2010年モデル。左側のサントリーニ・ブラックは2013年モデル。2012年に小変更があったのだが、その僅かな変更点は、こうして並べてみることでようやく分かる。バリ・ブルーはリヤゲートに丸いボタンが付いていて、それを押すとゲートのロックが外れる。サントリーニ・ブラックは横一直線になった取っ手の下部に入り込んでいて目立たないようになっている。つまり、上下に分割されるゲートは共に変更になっており、オープン用のボタンの位置が違うということは配線も違うところを通っていることになる。そして「RANGE ROVER」エンブレムの位置が下から上に変わっており、更に「SPORT」のエンブレムも左右で変更になっている。
同じ「マイナーチェンジ後」という枠の中で更に小変更が加えられ、結果的にはアッパー、ロワそれぞれのリヤゲートの形状も変わり、配線の取り回しも変更になっている。機能的には関係のないことだ。全てはデザインありきの結果である。わずか2年でここまでする必要があるのかと思ってしまうのだが、これこそデザインとしての拘りなのだろう。
いやいや、やはり私には到底たどり着けないほど緻密な世界である。


昨夜に引き続きもう一曲、浜田省吾さんのアルバム「初秋」から。
「君の名を呼ぶ」