自動車を所有しているみなさんもきっと加入していらっしゃると思うが、今日は自動車保険について、その中でも車両保険に関するトラブルの例を紹介しよう。

あるお客さまが夜間に運転中のこと。道幅およそ6メートルのセンターラインのない道路。小型トラックが路上駐車されていた。それを避けて通ろうとしたところ、対向車のヘッドランプが迫っていることに気付き、トラックの手前で減速して対向車をやり過ごそうとした。そこでほんの少し目測を誤り、自車の左前をトラックの後部バンパーの角にぶつけてしまった。その様子に気付いた対向車は少し通り過ぎたところで停車した。その車両は所轄警察のパトカーだった。
警察官も事の次第を見ていたそうで、お客さまはその場で免許証を提示するなどして警察官と共に事故の事実確認をした。駐車中の車両にぶつけたこともあって、その所有者を特定して賠償する必要もある。警察官は所有者が分かり次第連絡をすると言った。
夜間だったこともあって、我々にそれらの第一報が入ったのは翌日のことだった。お客さまのクルマはその日のうちに入庫した。お客さまが加入している車両保険は「車対車」というタイプ。自損事故の場合には保険はおりないが、相手が車両の場合には保険金が支払われる。もちろん保険会社にも連絡済みで、そこに○○警察署の警察官が居合わせたことも伝えた。保険会社は「では、事故届けは○○警察署にされたということですね。ではさっそく修理に取り掛かってください。」 と。

そんな経緯で修理が完了した頃、保険会社から「相手の車両が特定されていない」と不可解な連絡があった。え?だって、その場にパトカーに乗った警察官が二人も居てトラックのナンバープレートを書き写し、相手が分かったら連絡するとまで言っていたんですよ!
保険会社によれば、警察署に尋ねたところ、確かに当日そのような「出来事」があったことは把握している。ただ、その場の警察官は事故届けを受理したわけではなく、トラックの所有者探しのお手伝いをすると言っただけだと・・・。おいおい、今頃になってそんなこと言われても困るよ。自動車保険の内容が「車対車」なだけに、相手車両が特定されない限り保険金が支払われないのだ。保険会社はせめて登録ナンバーだけでも分からないかと言ってきた。それこそ警察に聞けば分かることではないか。ところが、当事者である客さまが聞いても保険会社が聞いても個人情報が云々とか言って警察は教えてくれない。いや、そうじゃなくて、所有者の個人情報が聞きたいのではなく、とりあえず今知りたいのは登録ナンバーだけなんだけど!お客さまは警察に確固たる証拠が残っているものとしてご自信では登録ナンバーを控えていなかった。結局警察からは何の情報ももらえなかった。その後しばらく、お客さまはその道を通るたびにあの時のトラックが周辺に駐車していないか注意深く観察したが、結局見つけることはできなかった。

なんだか腑に落ちない話だが、保険金は支払われなかった。お客さまが事故の当日に警察官に免許証を提示するなどして事実の確認をしたのが「事故届け」ではなかったこと。保険会社がそれを警察に確認するタイミングが遅かったこと。我々も何も疑わずに通常の保険修理の処理を進めたこと。悔しいが、結果的には油断があったと言わざるをえない。しかし、その場に警察官が居て彼らも事故の状況を見ていて、お客さまは免許証まで提示をしていたにも関わらず、それが事故を証明することにならないとはとても残念だ。例えば、保険会社がいうように「せめて登録ナンバーさえ分かれば」ということでナンバープレートをメモしていたとして、それが証拠になるのだろうか。結局、悶々としたまま迷宮入りしてしまった事件であった。
万がいち事故を起こしてしまった場合には、ドライブレコーダーの録画データやケータイの写真など、自分自身でできるだけ多くの情報を取り揃えておくことが必要であることは間違いない。みなさんもご注意を。