今日、お客さまとブレーキに関するトラブル事例について話した。お客さまがインターネット上で見つけた事例なのだが、ブレーキキャリパーの「固着」の可能性についての話である。
私はお客さまから、「固着ってキャリパーがどういう状態になっていることを言うのか?」と質問された。
以下、私なりの推測である。

ランドローバー_ブレーキ
まず構造作動の勉強を。説明のために超簡単にキャリパー部分の断面図を書いてみた。
ブレーキペダルを踏むとマスターシリンダー内のブレーキフルードに圧力が加えられ、ホースやパイプによってキャリパーへ伝えられる。断面図のシリンダー部分に圧力が加えられるわけだ。するとピストンが左方向へ押され、パッドがディスクに押し付けられることでブレーキが効く。このとき、ピストンシールがたわんで変形する。ブレーキペダルを離すと圧力はなくなり、たわんだシールの復元力でピストンは僅かに右側に戻る。
これが正常作動。

さて、固着の原因を考えてみよう。
まずは経年でシールが硬化することでたわみ量が少なくなる。またはたわみがなくなる。するとブレーキペダルを踏んだときピストンは単純に左方向へ移動し、ペダルを離しても位置は復元しない。パッドは軽くだがディスクに押しつけられっぱなしになるわけだ。このとき、走行中にシュルシュルと擦れ音がすることがあるので、そこで異変に気づくケースもある。
また、軽くでもパッドがディスクに押し付けられているということは、つまりブレーキが僅かに効いたままの状態になる。ここではブレーキの片効きによってハンドルが取られることも考えられるのでそれもヒントになることもある。
その状態で走行を続けると摩擦によって発熱する。その熱で更にシールは硬化し、またブレーキフルードも劣化してカスが出る。シリンダーとピストンの僅かの隙間に入り込んだフルードがカスになって固体となり、ピストンの動きは更に悪くなり、やがては固着して全く動かなくなる。
そんなふうに固着することで悪循環で発熱が進み、ブレーキパッドは炭化するだろうし、更にはキャリパーが変形することもある。

これは固着のひとつの例だが、あとは錆が原因であることもあるし、過去にはピストンのメッキが剥がれてゴミとなって引っ掛かっていたこともあった。

では、トラブルになる前に気づくことはできるだろうか?ブレーキパッドを交換する際にはピストンを押し縮める。その時のスムーズさや"固さ"がヒントになることが多い。その他、車検や法定点検時に、たとえその時にブレーキパッドを交換しないとしても、ピストンを押し縮めてみることでその機能を確認することができる。
一般的には車検のたびにブレーキフルードを交換するが、それもこんなトラブルを防ぐためでもある。

いずれにしても、命に関わるブレーキのことなので整備や点検は慎重すぎるほどがちょうど良いと私は思う。