マスカレード・ホテルから引き続き、私が経験した「流石だなあ」と感じたホテルの接客応対のエピソードをひとつ。

あるホテルに到着し、チェックインのためフロントに着くと、ちょうど外国人観光客の団体が到着していてロビー内はざわついていた。そのホテルは二度目の利用で、前回使ったときにはとても静かで落ち着いた印象だったのでその喧騒は予想外だった。しかし、こればっかりはタイミングのことなので仕方がない。ちょうど団体客と重なっただけのこと。こういう時もある。
添乗員が多くのキーをフロントから預り、旅行者に順番に手渡し始めていた。私がチェックンを済ませてキーを受け取ると、担当したしてくれたフロントクラークの女性が「ただいまご案内いたします」と言う。部屋へは自分で行くから大丈夫と言ったものの、次の瞬間にはフロントから出てきて私の前を歩き始めた。
エレベーターホールに着くとロビーでキーを渡された団体客が既に大勢集まっており、エレベーターを待っていた。大きなスーツケースも転がしているし、とても一度や二度では乗り切れないほどの人。エレベーターは三機あった。クラークの女性は真ん中のエレベーターの扉の前に立った。じきに「チン」と音がしてエレベーターが到着した。誰も乗っていなかった。女性は手で招いて私を乗せてくれた。そして扉の中央に立ったままエレベーターの外からCLOSEボタンを押した。「それではごゆっくりお寛ぎください」、エレベーターは私だけを乗せて静かに扉が閉まった。団体客が一人も乗ることなく、まず私だけを客室フロアへ上げてくれたのだ。団体客を手で制するわけでもなかった。その動作は実に自然で、きっと団体客から「自分たちは乗せてくれないのか」とクレームをつけられるような隙もないほど巧みだった。上手に個人客と団体客をすみわけしたのだ。どちらのゲストにも不快な思いをさせないという心遣いだろう。おかげでとても心地よく過ごすことができた。

次からもこのホテルを使おうと思うのは当たり前のこと。そしてマスカレードホテルの山岸尚美と重ねていたのは言うまでもない。(笑)
加藤ブログ