幼少のころ、「余所行き」というジャンルの洋服があった。年始に親戚の家を訪れる際、年に一度の家族旅行、名古屋市内のデパートに出掛ける際、そんな"ここ一番"の時に着る洋服だ。本人的にも、それが嬉しいものだったかどうか記憶がない。動きにくいし、暑苦しいし、なんとなく着させられているような気がしていた。
子どものころなど一年もすれば身長が伸びて着られなくなるというのに、それでも「余所行き」は年に一度着る程度というほど特別な扱いだった。
おそらく小学校に上がったぐらいの頃だったと思うが、あるとき母が私のための「余所行き」を買ってきた。黄色のVネックのセーターだった。胸には傘のワンポイントが刺繍されていた。それを着てどこへ出かけたかの記憶はない。ウールだったかなんだったか、とにかく母が「家では洗えないから汚したらいかん!」としきりに言っていたことを覚えている。そんなの子供には無理なのに・・・。それともうひとつ、それがアーノルド・パーマーというブランドであることを連呼していた。もちろん私にはただの傘マークでしかなかった。アーノルド・パーマー氏が偉大なゴルファーであることを知ったのはそれから何年もあとのことだった。
私が生まれたのは1965年、ちょうどその当時、アーノルド・パーマーはマスターズを始めとするメジャー大会を次々と制覇し、まさにスーパースターだった。私たち世代ならタイガー・ウッズのような存在だったわけだ。
今朝、アーノルド・パーマー氏死去のニュースが届いた。私はアーノルド・パーマー氏の絶頂期のプレーを見たことがない。しかし、どれほど偉大なプレーヤーであったかは十分に知らされている。なにせ、ゴルフをしない母でさえ崇拝していたほどだから。
ご冥福をお祈りいたします。