クーラーの構造は自動車も家庭用も基本的に同じ。冷蔵庫もそう。ところが、家庭用クーラーや冷蔵庫ではガス漏れの故障はほとんどない。私自身は経験したことはない。しかし、クルマでは決して珍しいことではない。最近でこそガス漏れは減ったが、ランドローバーではほんの十数年前までは夏の風物詩といえるほど頻繁に起きたものだった。
ではなぜ自動車用クーラーだけ漏れが発生するのか?原因は二つあると私は考えている。ひとつは、置かれている環境。クーラーの構成部品の多くはエンジンルームにある。エンジンルームの温度は、100℃前後にまで上がることがある。そもそもエンジンの冷却水が90度前後で推移しているので気温と比べものにならないほど高温なるのは当然である。そんな過酷な場所にクーラーの構成部品のいくつかは存在する。なので構成パーツの劣化が早まることもやむを得ない。また、走行によって付着するゴミや虫などが原因でパーツの腐食が進むこともある。
もうひとつの原因は、冷媒回路の一部にゴムホースが使われていること。コンプレッサーはエンジンに対して固定されている。しかし、その他の構成部品はシャシにある。エンジン始動中はエンジンはブルブルと震えている。その振動を吸収すべく、エンジンはラバー製のマウントを介してシャシに載せられている。つまり、コンプレッサーへ繋がる冷媒回路はフレキシブル性が必要なのである。そのために一定部分だけではあるが回路にゴムホースが使われている。そのゴムホースの硬化などによって気密が保たれなくなる部分が発生する。家庭用エアコンや冷蔵庫にはゴムホースは使われていない。銅や真鍮、アルミニウムなどの金属製のパイプが使われている。だから漏れる可能性のある場所が限りなくゼロなのである。
このことを理解すれば、自動車のクーラーに不具合はつきもの!と、思えるようになるのである。(笑) 
また、ゴムホースから自然に漏れるという説もある。子供の頃に遊んだゴム風船。膨らまして口をしっかり結んでも、やがては萎んでしまう。ゴムの組織の間から空気が徐々に抜けていってしまうのだ。これは故障ではなく、自然の摂理である。同様にクーラーガスも徐々にではあるが漏れていく可能性もある。私ぐらいの世代以上の方ならきっと経験があると思うが、昔は数年に一度はガスの補充の必要があった。ガソリンスタンドでも日常的にクーラーガス補充のサービスが行われていた。

クラシックレンジローバー時代は、ガス回路のほとんどが金属製パイプではなくホースで繋がれていた。最近のクルマではほとんどがパイプとなり、振動吸収のためのやむを得ない部分に限りフレキシブル性のあるホールが使われる。そのため、漏れのリスクは格段に減った。
レンジローバークーラー